奨学生レポート RMFレポート ミュージックサロン インタビュー

2年の修士課程を終えて(千葉 遥一郎さん)

千葉 遥一郎さん/Mr.Yoichiro Chiba
(専攻楽器ピアノ/piano)

[ 2024.06.28 ]

リューベック音楽大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の千葉 遥一郎です。

 

奨学金給付期間中は、ドイツのリューベック音楽大学修士課程において最後の1年を過ごしていた。

 

<学内開催のショパンフェスティバルにて>

 

 

期間中は現地で数多くのコンサートに出演し、すなわち現場経験を積むことによって主に研鑽を積んできたがその全てが未知の感性へのアクセスの連続であった。

 

この1年での最も重要な収穫は、まさにその未知との遭遇に対しての度量を広げたところにあり、その事が結果的に自分の演奏家としての能力を飛躍的に高めたと実感する。

 

公演で訪れた土地の風土やそこに住む人々、時折遭遇するそもそも音楽に興味を持ったことがなく儀礼的に公演中そこに座らざるを得なかった聴衆とのコミュニケーションなどを通じて、日常において潜在的ではあるが問題提起が絶えず起こっていてそれにピアノを演奏する事で答えを見出そうとしていたような気がする。

 

 

公演と練習を繰り返す中で疑問の濃度が醸成されていきそれが最終的に帰結した瞬間が公演の最中であった時などは技術が格段に進歩する。

 

そうした日々を過ごすうちに自分の表現への欲求が世の中で起こっているあらゆる事象や不条理に対する疑問に端を発しているという事が何となく理解されてきた。

その疑問は言語化できるほど明確な形を持っていないのだが(プログラミングにおける数式のようなイメージ)、数式を音楽という形で出力することで言語より多くの意味をそこに付随させて表現する事ができる。

 

<下宿近辺の夜景 23時頃>

 

 

以前は作品と対峙した時に、作曲当時の情勢や作曲家の内面への考察を元に表現を練っていたが、今はその作業を早々に済ませ楽器に触れて音にする頃にはなるべく頭から追い出す習慣を持つに至っている。

ドイツで活動する中で作曲家が創作を展開していた当時の情勢と今のそれがあまりにも違う事をまざまざと見せつけられたからである。

 

これから国家演奏家資格取得課程に入学する流れとなるが、コンクールなどに挑戦しながらよりプロフェッショナルに様々な情緒を表現してゆきたい。